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Information 【編集部ノート】「MUNASHI」を繰り返し聴いて見えてきたこと ──20分のEPと1ヶ月の対話
特集

【特集】The DARARS「MUNASHI」全4曲徹底解説 ──20分に圧縮された復活の形

2026年3月16日にリリースされたThe DARARSの復活EP「MUNASHI」。わずか4曲、20分足らずのコンパクトな作品だが、そこには15年間の沈黙を経たバンドの現在地が凝縮されている。本特集では、収録4曲それぞれを編集部独自の視点で深く読み解く。

EP全体の構造

「MUNASHI」の構成は、単に4曲を並べたものではなく、明確な流れを持っている。

  • 1. Nice Lunch!! — 推進力と光
  • 2. bank3 — 重心と影
  • 3. ダウジング — 静謐と内省
  • 4. newscrap — 実験と解体

この4曲は、バンドの多面性を最短距離で紹介する設計になっている。光→影→内省→解体、という感情の振幅が、20分の中に圧縮されている。

1. Nice Lunch!! — 推進力と光

EPの冒頭を飾るリードトラック。3音程度の単純なギターリフから始まり、1周目と2周目でわずかにタイミングをずらしながら進行していく。このミクロな変化が曲全体に「前に進む感覚」を生む。

ドラムはキックがやや前に出て推進力を確保。ベースはルート音を長めに持続させて土台を作る。ボーカルのメロディは比較的明るいトーンで、EPの中では最もポップに感じられる1曲だ。

聴きどころは、2番のAメロ後半からサビに向かう展開。リフの音価が微妙に縮まり、全体のテンション上昇を生んでいる。音量は変わらないのに、なぜか緊張が高まる──そういう仕掛けが随所に仕込まれている。

公式ミュージックビデオも公開中。沖縄で撮影された映像と楽曲の組み合わせは、曲の別の側面を見せてくれる。

2. bank3 — 重心と影

EPの中で最もダークな曲。重心の低いベースラインと無機質なボーカルが、閉塞感と浮遊感を同時に生み出す、矛盾した質感の1曲だ。

ミックス面では、ローカットが最小限に抑えられており、低音域の圧が空間全体を満たしている。一般的には「ぼやける」と敬遠される低音の残し方だが、本曲の場合はそれが独特の重力として機能している。イヤホンより、低音がしっかり出るスピーカーかヘッドホンで聴くと真価が分かる。

ボーカルの質感は意図的に抑揚を消しており、感情表現というより「音の素材」として配置されている。歌詞を明確に聴き取らせるより、音の層の1つとして扱う姿勢が、本曲の静かな異様さを形作っている。

3. ダウジング — 静謐と内省

日本語詞による静謐な1曲。アコースティックギターのアルペジオとノイズの対比が印象的な構造で、EPの中では最も「歌もの」的な性格を持つ。

詞の内容は抽象的で、何かを探しているが見つからない、という感覚のスケッチ。具体的な物語性ではなく、感覚の輪郭だけを描くアプローチが採られている。沖縄在住のメンバー(伊藤)がメインボーカルを取っている、という構造情報を知ると、楽曲の風景がより立体的に浮かび上がる。

編曲面では、ミックス工程よりマスタリング工程に重点が置かれたという編集部の見立て。録音された素材の質感をなるべく崩さず、配信で聴感が破綻しないレベルだけを整える、という方針が感じられる。

4. newscrap — 実験と解体

EPを締めくくる実験的なトラック。フィードバックと反復リフで構成され、4分前後の展開の中でテクスチャーが少しずつ変容していく。

一聴すると反復だけで成立しているように聴こえるが、細部を聴くとリフのフレーズが1周ごとに微かに違う。音程は曖昧だが、明確な音程構造を持つフィードバックノイズを意図的に使用しており、「音程を持ったノイズ」というこのバンド特有のアプローチが最も顕著に現れている。

楽曲構造としてはA→B→A→Bのような対比ではなく、始まった状態から少しずつ姿を変えていく持続的変化の形式。歌メロ中心の聴き方に慣れたリスナーには取っつきにくいが、1曲の中で徐々に景色が変わっていく面白さは他では得難い。

4曲を通して聴くとどう見えるか

単曲単位で聴いても十分楽しめるEPだが、4曲を通して聴くと、別のレイヤーが見えてくる。

「Nice Lunch!!」の推進力 → 「bank3」の重心 → 「ダウジング」の静けさ → 「newscrap」の解体、という4つの状態遷移は、1つの短編小説の起承転結のようにも聴ける。各曲は独立しているが、並び順に意図が見える。

また、ボーカルの分担もEP全体で見ると興味深い。曲ごとにメインを取る人物が変わる(3人のボーカル担当がシャッフルされる)ことで、EPに変化がつき、一本調子になっていない。

どう聴くのがおすすめか

初回は予備知識なく通して聴く。2回目は各曲単独で繰り返し聴く。3回目は本特集のような解説を参照しながら通して聴く──この順序を提案したい。20分のEPだが、聴き方によって見える景色が変わる作品だ。

各曲の配信は Apple Music、Spotify、YouTube Music 等の主要ストリーミングサービスで可能。バンド公式サイトからもアクセスできる。