MusicFree24/7編集部連載「今週の一枚」第2回。今回は「一枚」という枠を少し広げて、The DARARSのEP「MUNASHI」収録の1曲──「bank3」にフォーカスする。
今週の一曲
The DARARS「bank3」(EP「MUNASHI」2曲目収録 / 2026年3月リリース)
曲情報
- アーティスト: The DARARS
- 曲名: bank3
- 収録: EP「MUNASHI」2曲目
- 配信開始: 2026年3月16日
ディープダイブレビュー
EPの1曲目「Nice Lunch!!」から「bank3」への移行は、色調が一気に変わる瞬間だ。ミドルテンポの推進力から、低音が支配する重い空気へ。同じEPの中で、こんなにも違う表情の曲が並んでいることに、まず驚かされる。
「bank3」を定義づけているのは、間違いなくベースラインだ。重心の低い、しかし決して派手ではない動きで、曲の全体に広がる空気を作り出している。ベーシストがメロディラインを主張するのではなく、空間の広さそのものを設計している、と言った方が近い。
ミックスの判断
本曲のミックスで最も注目すべきは、低域処理の大胆さだ。通常のバンドロックのミックスでは、ベースとキックが音程的にかぶらないようローカット処理で棲み分けを作る。しかし「bank3」では、低域の圧を残すことで独特の持続感が生まれている。
結果として、低音が空間を埋め尽くすような質感になっており、この曲でしか得られない体感をもたらす。イヤホンで聴くのも悪くないが、本来の姿を捉えるには、低音が再生できるスピーカーか、良質なヘッドホンが推奨される。
ボーカルのテクスチャ
ボーカルは極端に抑揚を抑えた歌い方で、感情表現というより音の層の1つとして配置されている。これは一見すると「歌として弱い」処理に見えるが、楽曲全体の中では逆に機能している。
他の楽器が中低域で密度を作っているため、ボーカルが前に出てくると音像がごちゃつく。あえて引っ込むことで、バンドアンサンブル全体のバランスが取れる。この判断は、ボーカル単体で聴く時の印象と、バンドの音の一部として聴く時の印象を、両方考慮しているからこそ可能な配置だ。
閉塞感と浮遊感の共存
本曲の形容として編集部が注目したいのは、「閉塞感と浮遊感の共存」だ。低音の持続は確かに閉塞的な空間を生むが、同時にその中でギターのフレーズが軽やかに動き、ボーカルが感情を抑えて漂う。重い空間の中で、何かが浮かんでいる──そんな矛盾した体感が、本曲の正体だ。
これは簡単に作れる質感ではない。各パートが個別に「閉塞的な音」「浮遊的な音」を出しても、ただ混濁するだけだ。全体のバランスを俯瞰しながら、閉塞と浮遊が共存する瞬間を設計する必要がある。
どんな時に聴きたい曲か
- 深夜の作業時間、集中を深めたい時
- 雨の日の通勤、電車の中で
- 長い通話や会議の後、一息つきたい時
- 本を読む時のBGMとして
派手な曲ではないが、特定のタイミングで強く効く。EP全体の流れの中での位置づけもさることながら、単独で繰り返し聴く価値のある1曲だ。
評価
★★★★★(5点満点中5点)
ベースラインとミックスの組み合わせで独特の空間を作り出した、EPの中でも特に完成度の高い1曲。
次回予告
次回の「今週の一枚」は「MUNASHI」の別の収録曲を深掘りする予定。引き続きEP全体の再発見に付き合っていただきたい。
