丸山だけど、世の中の常識は「著作権はフリーじゃない。ますます保護しなくちゃいけない」という感じじゃない。そういう考え方が特に音楽業界には強くあったから、そこでフリーにした方がいいと主張しても潰されちゃうわけ。だけど、著作権をどうするかっていうのは本来クリエイターが選ぶべきことなんだよ。厳しく保護してもらいたい人もいれば、できるだけフリーにして多くの人に聴いてもらいたい人もいる。だから、著作権は本来権利を持っているはずのクリエイターの選択に任せましょうっていうところからmF247はスタートしてるんだよね。
ひろゆきはいはい。
丸山……ってちょっと待って。(スタッフに向かって)俺のしゃべってること、整合性取れてるよな?
ひろゆき(笑)。
丸山俺のしゃべってることが、今までやってきたことと整合性が取れないと困るじゃん(笑)。
ひろゆきあ、やっぱり整合性って大事ですか?
丸山結構気にするね。
ひろゆき僕はあんまり整合性重視しないんですよ。
丸山あー、それどこかの記事で読んだよ。
ひろゆきあ、そうなんですか(笑)。というかですね。そのとき思ったことと、その前のときに手に入れた情報で考えてたことってやっぱりどこか違うじゃないですか。だから僕は整合性をそんなに重視してもしょうがないなって思ってるんです。
丸山いいよね。フリーな考え方で。
ひろゆきええ(笑)。
丸山俺らみたいな古いタイプの人間は「お前は前にああ言ってたじゃないか、でも今はこう言ってる。おかしいじゃねえか」みたいに整合性の部分を突っ込まれると、あなたみたいに「そのときはそう思ってたんだから」って、とっさに返せないんだよ。「あ!まずい!」って思っちゃうの。先に。
ひろゆきへえー。そうなんですか。でも僕は元からそんなに整合性を気にしていないというか、取れてないんですよ。でも、整合性が取れずに生きていても実はそんなに問題はないんですよね。まあ「あいつはああいうヤツだから」っていうレッテルは貼られちゃうんですけど。実際、そういうレッテルを貼られてもそんなに困ることはない。だから僕は多分銀行員とかにはなれないんでしょうが、別にこういう生活で満足してるんで。
丸山ならいいよね。俺は微妙じゃない。
ひろゆき確かに……。まともな業界出身ですもんね。
丸山まともっぽくもあるし、いい加減でもある。どっちもあるんだよね。レコード会社をまともな会社だと思ってる人には整合性を求められるし、「あなたもいい加減ですよね」的なことを言ってくるような人に対してはこっちもいい加減なスタンスでOK。だから俺は多分両生類。例えばソニーという大企業を捉えたときに、エンタテインメント性の強いソニーミュージックの内部にいるときは自分もいい加減でいいわけ。だけど、親会社はソニーだから、ソニーの人と話すときは整合性が取れてることを話さないとまともな交渉ができなくなっちゃうんだよ……って何の話してたんだっけ?(笑)。
――整合性の話でいうと、mF247は2005年にオープンしてから、毎年のようにサービスの姿を変えていきましたよね。当初は普通の音楽ダウンロードサイトだったのが、途中から音楽情報も入れていこうとか、miXtapes(ミックステープ)機能を入れてみたりとか。マイナーチェンジじゃなく、ドラスティックな変化を繰り返してきたと思うんですが、それは丸山さんの「整合性」と「いい加減」が両立している独自のスタンスが背景にあるんでしょうか。
丸山うん。僕の中で今、整合性っていうのは何か。それは著作権が多分これから先ドラスティックには変わらないまでも、著作権フリーに限りなく近くなる時代が来るんじゃないかって思ってることなんだよ。そこに続く道の第一歩としてmF247をオープンさせて自分の中にある整合性を示したつもり。2003年とか2004年くらいにそのへんのことをずーっと考えて、「著作権フリーの方が楽なんじゃないか」って結論になったんだよね。ただ、それでも俺は著作権を保護する旧来型の業界に長くいたから、揺れるわけ。
ひろゆき権利でメシを食ってたわけですからね。
丸山そう。揺れるじゃない。揺れるからこそ整合性ということが重要で、俺は多分まっすぐ著作権フリーの方向にベースの考え方は行ってるんだけど、もしかしたら場面場面によってそうでない発言をしている可能性があるんだよね。だから、整合性取れてるか確認したくなるの。僕が今シンプルに思ってるのは、このネットの時代で、もっと音楽業界をおもしろくするには、著作権というものの縛りをもっとゆるめていかないとおもしろくはならないなってこと。ダウンロードが爆発しなかったのは、単純に言えば著作権の縛りが強かったからじゃないかと。
ひろゆきでも、著作権の問題より、アーティストが多すぎるって考え方もありませんか? 例えば、1年間に曲を作るアーティストが10人しかいなかったら、どの曲もミリオンセラーみたいに売れるわけじゃないですか。今は誰でもパソコンがあれば簡単に音楽作れる時代ですよね。そうすると、メジャーだけじゃなく、インディーズからもどんどん新人が出てくる。結果、一個一個が売れる量が減っていく。著作権がフリーになって「誰でも自由に曲が作れます。どんどんネットに上げてください」ってなると、流通する曲の量はどんどん増えていきますよね。そういう波の中にクラシックみたいなこれまで数百年聴かれてきた曲も混じるわけで、そうすると曲を作ったことで対価を得て食うってこと自体、だんだん難しくなっていくのかなと。本当に優秀なアーティストが「曲だけ作って食っていきたい」と思っても、状況がそれを許さないみたいになっちゃうのもどうかなと思うんですよ。そのあたりはどうですか。
丸山うん。作品を作って食っていくっていうことをものすごく強く意識しているのは、ミュージシャンよりも日本文藝家協会の三田誠広さん(小説家・日本文藝家協会副理事長。著作権保護期間の延長活動などで中心的な役割を果たした)だよね。実はすべての著作権の権利団体の存在意義ってそこにあって、「プロが作品を創ることで正当な対価を得る環境をきちんと整えていかなきゃいけない」って権利団体はいつも言ってるの。そうしないと再生産できなくなるから。でも、権利団体の中にはそういうことより役員や職員の高額な報酬を維持拡大するために活動してるところもあって、それはおかしいだろうと俺なんかは思ってるんだよ(笑)。
ひろゆきはいはい(笑)。たしかにそうですね。
丸山権利団体がどうするかということとは別に、アーティストが食えなくなったら食えなくなったでいいじゃん。しょうがないだろうって思う部分もあるんだよね。
ひろゆきつきつめれば、ファンが少ないから食えないとも言えますよね。極端な話ですけど、本当に熱心なファンが100人いて、その人たちが毎月1万円ずつ出してくれれば食えるわけですから。
丸山だから基本的にはね、「みんな」を食べさせるために著作権をガチガチにする必要はないんだよ。
――これからは著作権をガチガチにしない方がいいという話や、インターネットが著作権を緩くしていくという話の流れでいうと、ニコニコ動画って新しい形を示したと思うんですよ。実際は違法なものもたくさんあったけど、著作権をあの場ではフリーにして、みんなで遊ぶ場所を作った。そこで新たなクリエイティブやおもしろいものが生まれていることに対して丸山さんはどう評価されていますか。
丸山もちろん、そういう方がいいに決まってるよね。ニコニコ動画もmF247もベーシックな考え方は一緒だろうと思ってるわけ。考え方が一緒だから今後についての不安はないし、もし考え方がずれてたら一緒にやりましょうなんて話にはならない。ただ、僕の考え方はそうだけど、mF247を信じて今まで登録してくれたミュージシャンはどう思うんだろうなってところは自分でもまだわからないんだよね。そこはシンプルな話で、これから自分の作品を発表していこうと思うミュージシャンで新しいmF247がイヤな人は来なきゃいいって思ってるよ。それで新たにゼロから募集することにしたわけだし。
ひろゆき確かに今はいろいろな出口がありますからね。別にウチにこだわる必要はない。
丸山mF247は独占的な新人の登竜門じゃないから。そういうものを求めている人は別のところにいけばいいし、これがおもしろいと思ってくれる人はここに来ればいい。